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『なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日』 門田 隆将

なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫 か 41-2)なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫 か 41-2)
(2010/08/28)
門田 隆将

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昨日、裁判員制度が始まって以来、初めての死刑判決が出た。裁判員の方々の精神的な重圧は大変なものであっただろう。

私はこれまで「人の命を奪ったならその者の命を奪う死刑が、罪にふさわしい罰だ」という単純な捉え方をしていた。しかし、『なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日』を読み、「死刑」の意味を深く考えさせられ、罰としての役割だけではないのだと知った。

この本を読むきっかけは、最高裁での弁護士達の詭弁への怒りであった。山口県光市で母子が殺害された事件で、ちいさな一歳にも満たない赤ちゃんを殺害した状況を「あやそうとして首を蝶々結びにしたら死んでしまった。」などという人をバカにしたような説を唱えた弁護団への怒りであった。そして、妻子を奪われた上こんな人達と戦わなくてはならない、遺された本村洋さんを気の毒に思い、共感したり応援できることがあれば・・・という思いだった。

本村さんの闘いのほぼ一部始終が、ここには書かれている。「共感したり応援したりできれば・・・」などというおこがましい気持ちはすぐに封印した。
何の罪もない最愛の妻子を突然奪われた辛さは、誰にも共感できないほどのことである。また、この本に出てくる本村さんを応援した人達というのは、普通ではできないような気遣いや怒りや熱意を持っている。本村さんの日常を見て細かい気配りをした会社の上司や同僚から、時の総理大臣までもが、恐らく特別な思いで本村さんを支えた。
しかし、本村さんは支えられただけではない。妻子の死をきっかけに、日本の裁判制度の問題点を社会に明らかにし、それを一つ一つ解決していくという、社会正義のための活動していく。結果的に本村さんは多くの人々に支えられながら、より多くの人々に貢献したという事になる。

そのような本村さんのストーリーと並行して、「死刑」の意味を考えることにもなる。本村さんが面会したアメリカの死刑囚ビーズリー。彼がなぜ聖人のような顔になっていたか、そういう彼が死刑になる意味は?
この面会場面に、目から鱗が落ちる思いがした。
そして、本村さんの妻子を殺害した被告Fに対しての「死刑」判決の意味も最後に考えることになる。著者の門田氏は、初公判からずっと本村さんを取材し続け、最後にFに辿り着いた。ここでFに辿り着いたことが、この作品を非常に価値の高いものにしていると思う。
このFへの取材部分を読まなければ、私の「死刑」に対する考え方は、とても浅はかで陳腐なもののままだっただろう。

また、政治不信の今だからそういう部分に目が留まるのか、総理大臣のリーダーシップの必要性とその威力を再認識する場面も描かれている。

刑事訴訟法の中に被害者の権利がないと訴える本村さんの記者会見を見て、
「本村さんの気持ちに政治家として応えなければいけない」
と言及したのは、小渕総理(当時)。一国の総理が、特定の犯罪被害者遺族の名前を挙げる発言は、希有だという。総理が亡くなる11日前のことだった。

小泉総理(当時)は、本村さんを初めとする「全国犯罪被害者の会」のメンバー四人から直接話を聞き、弁護士出身の保岡興治議員に日本の現状を確かめた後、その場で、
「だめ!こりゃいかん!すぐやろう!」
と反応し、翌年には、犯罪被害者を保護、救済する議員立法が成立した。

人の気持ちがわかり決断力のある人が国のリーダーとなるべきだ、という思いを強くするエピソードだ。

今の制度では、私たちの誰が裁判員になってもおかしくない。「死刑」の意味や裁判や少年法に関する問題点などを知っておくことは大切だと思う。たとえ自分が裁判員にならなくても、私たち国民の代表として判決に加わる人々への共感や理解に繋がると思うのだ。
本村さんが、闘いながら、私たちに知らせてくれたこれらのことを、是非読んでみていただきたい。
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