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『救命センターからの手紙 ドクター・ファイルから』 浜辺 祐一

救命センターからの手紙 ドクター・ファイルから (集英社文庫)救命センターからの手紙 ドクター・ファイルから (集英社文庫)
(2001/03/16)
浜辺 祐一

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『Dr.コトー診療所』の熱心な視聴者であった私は、この浜辺祐一医師の著書を初めて読んだとき、「何て冷たいお医者さんなのだろう。」と思った。
 
 患者の名前なんて覚えていない。
 生と死の境目にいる患者をネタにして冗談を言いながら治療を進める。
 患者が治ったからと大喜びするわけでもなく、残念な結果になっても淡々とやはりダメでした、はい次・・・という感じである。

しかし、読み終えると次の一冊を手にしていた。なぜか惹かれるものがあるのだ。
そして二冊目に読んだこの『救命センターからの手紙』では、その魅力の秘密がわかった。ここには現場の医師の本音が包み隠さず書かれているのだ。

救命センターでは、コトー先生のようにじっくりと患者と向きあうとか、患者やその家族の人となりまで知って治療することはまずない。
見知らぬ患者が突然運び込まれ、最善の治療が求められ、後からやってきた家族の思いもかけない言動を目の当たりにすることもしばしばだ。
「病気を見ずに、人を見ろ」なんてことを言われなくても、人間の本性をイヤと言うほど見ている。

また人の生死を分ける場面に数多く遭遇し、それについての素早く適切な判断が求められ、否が応でも「人の命とは何か」ということをきれい事ではなく考える機会が多いのだろう。

 ほんの僅かな社会復帰率に望みを託して、多くの植物人間を作り出して良いものか?
 「人の命の価値に上下はない」というのが、果たしてどんな場合もそうなのか?
 よくない結果を告知をすべき患者とすべきでない患者は?

本書に出てくるさまざまな疑問は、現場でぎりぎりの治療をしている医師にしかわからない迷いであったり本音である。

この本音を読んでいるうちに、浜辺医師は冷たいわけではないことが徐々に分かってくる。

 狂言自殺の常習者が誤って猛毒を服んでしまったことへのやるせない気持ち。
 「散々迷惑をかけられたから」と、危篤状態の兄の所へ来ようともしない弟が「臓器は好きなように使ってください」と軽々しく言ったときの怒り。

患者を大切にしていないわけではないのだ。時には患者の家族以上に思いやっている。その背景には、せめて医師が思いやってあげなければならない患者が多いこともあるかもしれない。解説の小林和男氏は、浜辺医師の
「それにこの仕事をしていると、家庭というものが本当に良いものかどうかという疑問もありますし・・・」
という言葉を聞いている。
身体の病だけでなく社会の病をも常に見ている浜辺医師が、ニヒルに呟かざるを得ない心境が何となく理解できた。

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