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多忙

年末と学年末、クリスマスが重なり、一年で最も忙しい時期。こんな時に、大家さんの都合で引っ越しをしなければならなくなりました。もともと借家が少ない中、床に座る生活ができる手入れの行き届いた家を探すのに、とても苦労しています。嗚呼、日本の畳はいいなぁ・・・。
そういうわけで、しばらくブログの更新ができなくなりそうです。取り急ぎお知らせまで。
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『氷川清話』 勝 海舟/勝部 真長・編

氷川清話 (角川文庫ソフィア)氷川清話 (角川文庫ソフィア)
(1972/04)
勝部 真長、勝 海舟 他

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「まあお聴き。」と語り始める勝海舟の話は、落語のようで気楽に読むことができる。しかも、その内容は、幕末から明治初頭の歴史を生々しく再現しており、下手な小説よりおもしろい。
例えば、咸臨丸でアメリカを視察して帰国した折の話。

浦賀に着いたから、おれは一同を入浴のために、上陸させてやろうとしているところへ、浦賀奉行の命令だといって捕吏がどやどやと船中へ踏み込んできた。おれも意外だから、「無礼者め、何をするのだ」と一喝したところが、捕吏がいうには、「数日前、井伊大老が桜田門外で殺された事件があったので、水戸人は厳重に取り調べねばならぬ」というから、おれも穏やかに、「アメリカには水戸人は一人もいないから、すぐに帰れ」と、ひやかして帰らせたよ。

幕末は物騒で、幕臣であった海舟は度々命を狙われている。ある時、夜中に市内を歩いていると三人の壮士に襲われた。

驚いておれは後へ避けたところが、おれの側にいた土州の岡田以蔵がにわかに長刀を引き抜いて、一人の壮士をまっ二つに斬った。「弱虫どもが、何をするか」と一喝したので、あとの二人はその勢いに辟易して、どこともなく逃げていった。おれもやっとのことで虎の口をのがれたが、なにぶん岡田の早業には感心したよ。
後日、おれは岡田に向かって、「君は人を殺すことをたしなんではいけない。先日のような挙動は改めたがよかろう」と忠告したら、「先生。それでもあのとき私がいなかったら、先生の首は既に飛んでしまっていましょう」といったが、これにはおれもひとこともなかったよ。


司馬遼太郎の『人斬り以蔵』は暗くて孤独なイメージだったが、このエピソードにはユーモアが感じられる。
こんな調子で、自分の生い立ちから仕事ぶり、交流のあった国内外の人物、はたまた徳川歴代将軍を始め、歴史上の人物についても、ざっくばらんに語っていて、江戸以前の歴史をとても身近な物に感じさせてくれる。その当時に書かれた書物で時代を知るという手もあるが、海舟の豪快で活き活きした語り口ほど取っつきやすいものは無いだろう。

また、海舟の視野の広さと行動力には驚かされる。オランダに海軍の技術を習い、イギリス公使と親しく付き合い、アメリカを視察し、朝鮮の政治家が相談にやってくる。これら外国との付き合いで培った国際感覚と、茶屋の女将や火消しの親分など市井の人との付き合いで知った人心のつかみ方、どちらをも兼ね備える人物はなかなかいないのではないか。この付き合いの広さをみてもわかるように、経験主義を信条としていて、机上論を嫌い、現実を見て行動を起こすべきだと考える。

実際に海舟は、対馬に侵入して居座るロシア軍を他国を利用した巧妙な手口で撤退させたり、維新後に八万人にも及ぶ旗本を静岡に移す手はずを整えるため自分で農家の間を走り回ったりと、頭を使い、体を使って国のために奔走する。そのような仕事ぶりだったから、理屈ばかりこねる政治家への舌鋒はするどい。

しかるに、学問にこりかたまっている今の人は、声ばかりむやみに大きくて、肝魂の小さいことは実に豆のごとしで、からいばりにいばるけれども、まさかの場合に役に立つものは、ほとんどまれだ。みんな縮みこんでしまう先生ばかりだよ。

そういう海舟は、難事に身命を捨ててかかるという経験を何度もして、肝魂は据わっている。そして学問は「活学問」に限るという。

活学問にも種々しかたがあるが、まず横に寝ていて、自分のこれまでの経歴を顧み、これを古来の実例に照らして、しずかにその利害損得を講究するのが一番近道だ。そうすればきっと何万巻の書を読破するにもまさる効能があるに相違ない。

海舟は、決して書物での学問を怠っていたわけではない。蘭語を学ぶために蘭語辞書五十八巻の筆写を二部完成させたり、夜間だけ筆写を許された兵書を半年通い詰めて写し取ったりもしている。が、さまざまな経験を積んでいるうちに、経験から導き出される戦略や戦術が正しいと確信をもつようになったのではないだろうか。

勝海舟は、幕臣でありながら大政奉還を促したという立場であり、旧幕臣からは批判が多い。「大逆臣」「徳川を売るイヌ」とまで呼ばれた。また志を一にした坂本龍馬や西郷隆盛は早々に亡くなってしまった。彼らとの比較で、明治の政治家達をあまり高く評価していなかったこともあり、新政府側からも海舟は疎んじられている節があった。
しかし『氷川清話』、一緒に収められている『勝海舟伝』を読んでみると、海舟は並々ならぬ人物であり、考えていることが大きく、長年の鎖国で視野が狭くなっていた当時の人々の理解を超えた発想をしていることがよくわかる。

先日、渡部昇一さんが、人間に必要な精神として「頭(知力)」「心(情)」「胆(胆力)」を挙げられていたのを読み、私は咄嗟に勝海舟を思い浮かべた。海舟には、この三つが備わっていたのではないかと思う。はたして、今の日本にも、このような剛胆な人物はいるのだろうか。

『ほたる館物語 3』 あさの あつこ

ほたる館物語 3 (3) (ピュアフル文庫 あ 1-6)ほたる館物語 3 (3) (ピュアフル文庫 あ 1-6)
(2007/05)
あさの あつこ

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『ほたる館物語』の三巻目は、ほたる館に山菜などを売りに来る「山ばあさん」が登場し、戦争にまつわる思い出話が主題となる。私の好みとしては、このシリーズは、ほたる館が中心の日常を描いた作品であって欲しかったので、やや話が広がりすぎた気がする。しかし、この巻にもやはり、大変共感できる部分があるので紹介したいと思う。

ほたる館の一人娘である小学生の一子は、自分の担当の仕事である庭仕事をしていた。友人の柳井くんに、子供なのに仕事の段取りができてすごいと言われた一子は、突然不機嫌になる。「子供なのに」「小学生なのに」という言葉に、カチンと来るのだ。

 ほたる館は、ずっと人手不足で大変なのだ。自分が一人前とはいかなくても、半人前以上の働きをして、けっこう助けている、と思っている。
 それに、一生懸命働いたら、お年玉にちゃんと帰ってくる。去年からは、お年玉の袋とは別に、働き賃の入った白い封筒を渡して貰えるようになった。おばあちゃんは、子供だからといって金額をおさえたり、へんにたくさんくれたりしない。一子のした仕事だけをきちんと見て、その仕事に見合っただけの賃金をくれる。大人と同じあつかいだ。だから、がんばる。


子供あつかいをせず大人と同じ物差しで測って貰うというのが、「働き手」としての誇りの源だ。その物差しを適用した「仕事に見合っただけの賃金」は、何と尊いものだろう。同じお金でも、お小遣いとは全く違うものなのだ。

我が家でもそうだった。幼い頃は、家業の手伝いをしても真似事のようなものだから、皆からの「ありがとう。」の言葉だけがご褒美だ。それだけでも、役に立ったような気分になり嬉しかった。「働き賃」が貰えるのは、仕事を覚え、私がいなければ誰か人を雇わなければならなくなるくらい、質・量ともにこなせるようになってからだった。
以前私は、家庭内のお手伝いに対してお金を支払うことへの疑問を書いた。それは、家族の助け合いと商売上のきっちりした金銭勘定とは区別するべきだし、その二つには相容れないものがあるという感覚を持っていたからかもしれない。

ほたる館でアルバイトをすることになった柳井くんには、その辺りをきっちりわかっておいて貰わなあかんと、一子は柳井くんにこう発破をかける。

「柳井くんも、ちゃんとアルバイト料もらうんやろ。子どもやからなんてこというてたらあかんで。お金もろうたら、下働きでもプロなんやから」

最近は小学校でも、「経済を学ぶ」といって株の話をしたりするらしい。しかし、経済の基本は「自分の働きに見合ったお金をもらう」ことではないだろうか。
前回、『ほたる館物語2』の記事には、個人商店や自営業が減っているというコメントをいくつか頂いた。子供のうちから、「働き手」としてのプロ意識を身につける機会は、今はあまり無いのかもしれない。そうであれば尚更、初等教育では「汗水垂らして働く」ことの大切さを教える方が大事なのではないだろうか。
子供の頃から、楽して儲けることばかりを夢見るようになっては困るし、「経済」というとマクロのことしかイメージがわかず、自分が働くことに結びつかないのも困る。「働くこと」抜きに「お金のこと」を教えるのは何かが違うと思うのだ。

※これまでに紹介した『ほたる館物語』シリーズ
『ほたる館物語1』
『ほたる館物語2』

Appendix

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